しかし大切なのは、高濃度ビタミンC療法だけでは、延命やガンの消退効果は達成できないことです。がん治療患者の栄養状態の改善を図ることが、一番大切なのです。
血中アルブミン値を出来れば、3.5mg/dl以上に保ち、ヘモグロビン値も10g以上、出来れば12g以上あると、高濃度ビタミンC療法を併用すると結果が期待されます。
アルブミンの濃度を上げるには、アルブミン点滴静注や経口でプロテインやアミノ酸(健康保険薬ではESポリタミン)や、BCAA(ロイシン、イソロイシン、バリン等の分枝鎖アミノ酸)をサプリとして投与することが出来ます。
この栄養療法を併用して“ヘム鉄"を投与すると、ヘモグロビンの上昇が期待できます。
通常がん治療患者は、とくに抗がん剤化学療法や放射線療法は免疫機能を下げ、体の栄養状態を悪化させますので、がんで死ぬより栄養障害で死亡すると言われています。
このように、がん治療患者がガンと闘い、よいQOL(生活の質)を保つためには通常の元気な人間以上に栄養状態に注意を払う必要があります。
進行の進んだがん治療患者は、通常たん白質不足のために高度の貧血があります。
栄養を与えるとガン細胞が栄養を奪って、ガンの成長が速くなるとの誤った考えから「食を控える」、とくにたん白質を抑える間違った栄養指導がされています。
過去4年間、私は東京でポーリングの分子生物学の知識に基づき、ポーリングが唱えた「分子整合栄養医学」を金子雅俊先生に習ってきました。
そしてその知識を日常の患者のケアに実践し、とてもお役に立っています。勿論高濃度ビタミンC療法のがん治療患者の栄養にも注意して、活用させて戴いています。
金子先生は、米国でポーリングが存命中にポーリングの薫陶をうけ、20数年前に日本に帰国以来「分子整合栄養医学」を日本で広めておられます。
金子先生とカンサスのリオルダン医師は、ポーリングの同じ門下生のために、金子先生は日本で早くから「高濃度ビタミンC療法」を実施され、私たちにその効用を教授されて来ました。
爾来、私もガン患者の栄養問題と「高濃度ビタミンC療法」に大変興味を抱いていました。そして平成20年の1月からその知識を活用しています。これは非常に嬉しいことです。
高濃度ビタミンCが細胞に入ると過酸化水素(H202・別名オキシフル)が発生します。
正常の赤血球膜には「G6PD」という酵素があり、高濃度のビタミンCを処理出来ます。従って高濃度ビタミンC点滴療法を実施する前に必ず赤血球膜G6PD活性を測定します。
G6PD活性が低下している患者に、高濃度のビタミンCを血管内に投与すると、重症の急性溶血性貧血発作を起こす危険が存在します。 これが重大な副作用であり、その他は安全な治療法であると報告されています。
しかし米国カンサスでの報告では1000人に5人程度の割合で、「G6PD」酵素(グルコース6リン酸脱水素酸素)が低いか欠乏している人がいることが判明しています。
不十分な「G6PD」酵素のために、大量の赤血球が破壊され、肝臓や腎臓の働きが落ち、重篤な副作用があることが発表されています。
安全のために高濃度ビタミンC療法を始める前に「G6PD」酵素が十分にあることを検査証明する必要があります。
また、栄養の悪い患者に高濃度ビタミンC療法を継続すると、腹水が貯まることがあります。
これは軽い利尿剤の投与を行うか、アルブミン製剤を点滴静脈注射したり、経口でたん白質を補う必要があります。また利尿剤とアルブミン投与を一緒に使うことで解決が可能です。