ビタミンCの大量療法が「ガン細胞を殺す」として最近発表され、ビタミンCが再登場してきた。米国の化学者ライナス・ポーリング(Linus Pauling 1901-1994)によって、ビタミンCの大量療法を投与することで、「風邪が治る」ことが、昭和45年(1970)に発表された。そのころ私は米国のアイオワ州で外科のレジデントの3年生であった。医学界での彼に対する反応は冷やかであったことを思いだす。また当時ポーリングはカリフォルニア州のスタンフォード大学の学長であったが、学内のスタッフはポーリングを狂人扱いにしていたという。
その後、ポーリングは英国のガン外科医ユアン・キャメロンの示唆で、ガン患者へのビタミンCの大量投与がおこなわれ、ガン患者の延命効果が一般書「癌とビタミンC」の中で発表された。
このポーリングのアイディアを弟子で医師のヒュー・リオルダンが継いだ。彼はカンサス州のウイチタでガン患者に対するビタミンC大量療法を行う施設を開設し成功した。大量療法とは、1日の投与量がミリグラム単位ではなく、50gから100gの量を指す。
ポーリングは平成6年(1994)に他界したが、彼の死後約10年経った平成15~16年ころ、ビタミンC大量療法の効能に関する新事実がカナダとアメリカの研究グループによって発表された。米国のNIHも認めたことにより、ビタミンC療法が全世界に広がりつつある。
ビタミンCがガン細胞を殺す作用は解明されている。高濃度ビタミンCが細胞に入ると過酸化水素(H202・別名オキシフル)が発生する。正常な細胞は過酸化水素を処理出来るが、がん細胞は処理出来ないために死亡する。正常の赤血球膜には「G6PD」(グルコース6リン酸脱水素酸素)という酵素があり、高濃度のビタミンCを処理出来る。従って高濃度ビタミンC点滴療法を実施する前に必ず赤血球膜G6PD活性を測定する。G6PD活性が低下している患者に、高濃度のビタミンCを血管内に投与すると、重症の急性溶血性貧血発作を起こす危険が存在する。これが重大な副作用であり、その他は安全な治療法であると報告されている。
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